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細かい理屈ではなく、スクリーンに映るものをとにかく面白く撮っていく。ただただ、そのことに異様な熱量をぶっかけたような、三池崇史監督のヤクザ×ヴァンパイア映画『極道大戦争』(全国公開中)。本作で主演を務めた市原隼人に先日、インタビューを行った。

“ヤクザヴァンパイア”に噛まれたカタギの人たちが、みんなヤクザ化して、世の中が混乱していく。市原が演じたのは、尊敬する親分の遺志を継いでヤクザヴァンパイアとなり、親分を殺した黒幕と激突する役。

「親方のために、組のために…というヤクザとしての感情も小さく思えるほど、出てくるキャラクターがぶっ飛んでいますよね。台本を読ませていただいた段階で、『これはすごい作品になる』と思いました」

映画作りの「衝動」で生まれたような、映画。「ヤクザヴァンパイアって何なの」と意味を探すのではなく、その映画の世界のルールを信じて観る。映画は嘘で出来ているし、その作品が、我々にどういう嘘をついてくるのか。それが楽しい。『極道大戦争』はそこを思いっきり振り切って、作られている。

「すべての映画が過去になったような感じですよね。まさに、映画ファンが作った映画。今の日本映画で、こういう内容の映画を完全オリジナルで作ることは、本当に難しい。だけど、昭和の時代の映画のように、オリジナルでおもしろいものを懸命に作ることで『夢を追うことを、忘れずにいましょう』と言われたような気がした。撮影中も、『これが映画の現場なんだ』と思える瞬間がたくさんありました」

日本映画は、今や企業同士がコラボレーションしたビジネス的なものが多い。そうしないと、業界としてまわっていかなくなっている。もちろん、それを悪くとらえてはいけないが、しかしビジネスとしてある程度の採算性のある原作モノ、そしてテレビ放送を意識した安全描写ばかりの中、『極道大戦争』は、そんなタイドアップされた日本映画へのフラストレーションを爆発させているようである。

「映画に限らずですが、もの作りには必ず何か規制がある。そして、それにフラストレーションを持たない作り手、役者はいないと思います。この世界は、ビジネスマンと技術者で成り立っている。そこが完全に交わることは難しい。ただ、それでもお互いができるかぎり寄り添って、作品が生まれ続けている。ひとつ言えるのは、僕たち役者は技術者という“裏方”であり、花道を歩くのはお客様。だからこそ、規制のある映画、規制が少ない映画、すべてをおもしろく観てもらうために、どんなことでも挑戦していきたいです」

映画『極道大戦争』は全国公開中
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取材/文・写真 田辺ユウキ(映画評論家)

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。