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 長い暖簾の奥、格子にすりガラスの入った引き戸を開け、お二人は笑顔で迎えて下さった。どちらも色無地の着物に個性的な眼鏡が印象的。私は、その最初の笑顔を拝見できてほっとしていたのだが、息子はそうはいかなかったようだ。

これまでに出会った大人とはちょっと印象の異なるお二人を見て圧倒されてしまったのか、はたまた眼鏡によって予防接種をした小児科の先生のことが思い出されたのか、お顔を見るなり「ひーん」という情けない声を出して私の足の後ろへとまわり込む。ついさっきまで同行の女性たちに満面の笑みを向けていたばかりだと言うのに。

「大丈夫だよ、怖いところじゃないよ」
と言い聞かせながら、その実、私自身もちょっとドキドキしながら、息子と自分の靴を脱ぎ工房へと上がらせて頂いた。

 お邪魔したのは、紋章上絵師の波戸場承龍さんと、同じく紋章上絵師で息子さんの波戸場耀次さんの工房。紋章上絵師というのは、主に家紋の作成や、家紋を着物に手書きで描く職人さん。

しかし、波戸場さんの仕事はそれだけに留まらない。紋章上絵師ならではの作図方法で企業のロゴや商品ロゴなどのデザインをしたり、うすはりグラスにサンドブラストした家紋グラスや、ユナイテッドアローズで販売されているラインストーンで家紋を描いた合切袋など、他企業とコラボレーションしたプロダクトも多く手がけていらっしゃるのだ。

更には、「紋曼荼羅MON-MANDALA」や「KAMON×KOMON」といった作品群も発表されており、海外での展覧会の実施や、オリジナルの着物も作ったり、とにかく多才だ。職人と言うよりはデザイナー、あるいはアーティストと言った方がしっくりきそうだ。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/